20世紀は、速度の時代だった。イタリアの詩人マリネッティが「未来派宣言」を発表し、機械とスピードの美を手放しで称揚したのが1909年

 破壊と殺戮(さつりく)の二つの戦争を経て、単純な近代化が、そうそう幸福をもたらすわけではないことに気づいたものの、「速度」は相変わらず命脈を保ち続けた

 時代の速度は今、さらに加速している。コンピューターは猛烈な勢いで進化して、生活の隅々にまで入り込んだ。株式市場では1秒間に無数の取引が行われ、戦場では無人機械が人を殺す。およそ人が制御し切れないほどの速さで動く世界がある

 だからというわけでもなかろう。しかし、少しは関係しているかもしれない。競技者が、それまでに人の到達した速度を乗り越えようとしたとき、無性に感動するのは

 速度だけなら機械の方が速いに決まっている。バイクなら42・195キロに2時間とかからない。だが機械に物語が編めるか。ラグビー日本代表が、じりじりと敵のゴールラインに迫る興奮を代替できるか。心を震わせるのは記録ではない。人の物語だ

 きょう徳島駅伝がスタートする。3日間、16郡市の代表が全43区間257・3キロに挑む。ランナーがいて、沿道で見守る観客がいて、レースを支える裏方さんがいて。1本のたすきがつなぐ、たくさんの物語が今年も生まれよう。