ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。互いの仲の悪さに、にわかには信じ難いかもしれないが、いずれも同じ神を信仰している

 7世紀に成立した、いわば末弟ともいえるイスラム教も、聖典コーランでモーセやイエスを「預言者」に位置付ける。「世界が滅びる」などとのたまう「予言者」とは訳が違う。神の言葉を預かった者とする、きちんとした扱いである

 イスラムの預言者ムハンマドは、元商人。40歳ごろ、現在のサウジアラビア、メッカ郊外で啓示を受けたとされる。死後、後継者を誰にするかで騒動が起きた。時の政治情勢も絡み、ムハンマドのいとこで娘婿だったアリとその子孫でなければ、と主張したのがシーア派である

 信徒数でみれば15%程度だが、ペルシャ人の国イランではシーア派が90%以上を占める。対する多数派、スンニ派の盟主を自任するサウジはアラブ人、産油国で王族支配。中東と聞いてまず思いつく材料を取りそろえたような国だ

 ペルシャ湾を挟んで向かい合う両国が断交した。反体制活動に神経をとがらせるサウジが、国内シーア派の指導者を処刑したのがきっかけである。シリア危機の解決にも影響が及ぶ恐れがある

 3宗教の源は一つ。分かれ分かれて争い争って。言ってもせんないことながら、わが身も含む人間は…。一体どうしたものだろう。