北朝鮮の平壌で、学校から帰った子どもがお母さんに尋ねた。「ねえお母さん、この国にはどうして、朝鮮労働党しかないの?」。さっと顔色を変えたお母さんが、子どもを叱った。「お前、めったなことを言うもんじゃないよ。1党でまだ足りないとでも言うのかい?」
 
 新作の小話だが、旧東欧圏には似たような話が幾らもあった。食べ物がない、燃料がない、自由がない、着る物がない、娯楽がない。ないない尽くしの生活で、民衆は政府と指導者を笑いものにして憂さを晴らしてきた。話が外に漏れると身に危険が及ぶのだから、笑うのも命懸けだ
 
 北朝鮮が「水爆実験」をしたと聞き、新たな小話が生まれる予感がした。「お母さん、偉い人が水爆っていう大きな爆弾を作ったの?」「ああ、そうだよ、これでアメリカも攻めて来れないから、偉い人は逃げなくていいんだよ」「じゃあ、僕たちは永遠に偉い人から逃げられないんだね」
 
 罪のない小話にうら悲しさと痛々しさが漂うのはなぜ? 民衆は食料不足なのに、丸々と太った最高指導者が、莫大(ばくだい)な費用が掛かる核をもてあそぶからか
 
 国際社会は北朝鮮制裁を強化すべきだ。ルーマニアのチャウシェスク独裁政権の末路を見るまでもなく、国民の不満が頂点に達した時、政権は崩壊する。民衆はいつまでも陰で笑ってはいまい。