国の特別天然記念物のトキの学名は「ニッポニア・ニッポン」。江戸時代、長崎・出島のドイツ人医師、シーボルトがオランダに標本を送ったことから名付けられた

 だが、乱獲がたたり、2003年に国産のトキは絶滅した。今、日本の空を飛ぶのは、中国産トキの子孫だ

 「ジャポニウム」が候補名ともいわれるのは鳥ならぬ、理化学研究所のチームが発見した113番元素である。米国・ロシア共同チームとの競争に勝ち、日本科学界の悲願だった命名権を獲得した。水素、酸素、鉄など“お歴々”と並んで教科書でおなじみの「周期表」に載る。世界中の学生や科学者が、その名を呼ぶと思うと誇らしい

 研究を率いた森田浩介・九州大教授は研究開始から30年余りでの成果に「科学者は愚直じゃなきゃだめ」と言う。「愚直」は<正直すぎて気のきかないこと。馬鹿(ばか)正直>(広辞苑)

 理研の名声は一昨年、元研究員による日本の科学史に残る研究不正で地に落ちた。それだけに森田さんの言葉は一層重い。昨年も国内外の名だたる企業で不正が発覚。罪もないユーザーらがばかを見るのでは世も末だ

 <嘘(うそ)ばかりいふ口唇に紅が冴(さ)え>(三笠しづ子)。不気味。<嘘の言えぬ男を神ももてあます>(柴田午朗)。共感。社会全体でうそを駆逐し、男も女も正直者が報われる年にしたい。