人類は小さな球体の上で眠り、起き、働いて、ときどき寂しがったりする生き物だ。谷川俊太郎さんが初めての詩集「二十億光年の孤独」を出版したのは20歳のとき

 <万有引力とは/ひき合う孤独の力である/宇宙はひずんでいる/それ故みんなはもとめ合う>。表題詩は、既にその2年前には出来上がっていた

 ランボーは19歳で散文詩集「地獄の季節」を著している。この後、文学を放棄、アフリカで武器商人となるおまけ付き。音楽家の初期の傑作も、調べてみれば意外なほどの若さに驚く。何ものかを創造する力、その最初のピークは、多分この年頃あたりから始まるのだろう

 「凡人の俺には関係ないね」ともいかないのである。きょう成人の日。君たち一人一人が唯一無二の作者、そして演者でもある作品の構想を、急いで練り上げなければ。さてこの人生、これからどうやって生きていく-

 「二十代で苦労した者だけが、三十代で夢の世界を見ることができる」と言ったのは、確か音楽家矢沢永吉さんだったか。あれ、どこかで聞いたぞ、といった俗な言葉も、よくよく噛(か)みしめれば、必ず真理の味がする

 <宇宙はどんどん膨(ふくら)んでゆく/それ故みんなは不安である/二十億光年の孤独に/僕は思わずくしゃみをした>。膨らむ世界に君たちなら、どんな地図を描いてみせるか。