「中国の昼は鄧小平が、夜は鄧麗君が支配する」と、中国の大衆に、政界の最高実力者と並び称されたのは、日本でも活躍した台湾出身の歌手テレサ・テンさんだった。台湾海峡を越えて大陸の夜を彩るのにふさわしい、甘い歌声が心に残る
台湾は戦前、日本の植民地で、今も人気の観光地だ。その台湾の総統選で台湾独立志向の最大野党、民主進歩党の女性候補、蔡英文主席が初当選した
勝利の報とともに、テレサさんの歌声と冒頭のフレーズが頭に浮かんだ。「台湾の昼は蔡英文が支配し…」と置き換えると感慨深い。蔡氏が破ったのは、与党候補だけでなく、女性の昇進を阻む「ガラスの天井」でもあった。米国の大統領選でもよく指摘されてきた、根強い偏見による見えない障害だ。勝利の意義は大きい
蔡氏は日本重視の立場。問題は中国との距離の取り方だ。馬英九総統は昨年、中国の習近平国家主席との首脳会談で、「一つの中国」の原則に基づく「92年合意」が中台の平和と発展の基礎だと確認した。だが、民主進歩党は92年合意を認めておらず、蔡氏は「対等な交流の道を探る」と述べた
中国の十八史略にある。「徳を耀(かがや)かして兵をしめさず」と。武力ではなく徳の力で、中台の未来を開いてもらいたい。中国古典は中国と台湾共通の財産であり、学ぶことは尽きまい。
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