阿波の生まれともいう元大坂町奉行所与力で陽明学者の大塩平八郎が窮民救済に兵を挙げたのは江戸時代も後期、1837年。天保の飢饉から程なくしてのことである
 
 <四海困窮せば天禄永く絶えん。小人に国家を治めしめば災害並び到る>。決起の檄文にはやむにやまれぬ心情がつづられている
 
 乱は1日で鎮圧された。功あったのは時の大坂城代、下総古河藩主の土井利位(としつら)。実はこの人、雪の結晶を研究した殿様としても知られる。86もの結晶の模様を写しとって「雪華図説」にまとめたのは、乱の5年ほど前
 
 そのレベルは同時代の各国研究者とも遜色がなかったと、この方面の古典的著作「雪」(岩波文庫)にある。著者の中谷宇吉郎は寺田寅彦門下の物理学者で、世界に先駆けて人工雪を作った専門家
 
 著書で中谷は嘆いた。日本人は自然災害をも静かに受け止める傾向が強い。その正体をつかもうとする科学的精神に欠けていたため、世界に類例をみない天災国にもかかわらず研究がすこぶる遅れた、と。もはや指摘は当たらない現代だが、災害に備え、対処し克服する研究は、いまだ途上であることも事実である。<災害並び到る>危険はなくなったとはいえない
 
 列島各地、大雪に見舞われている。県内は無縁、ともいかないようだ。慣れぬ雪。度の過ぎた用心でちょうどいい。