昔々あるところに、貧しい若者が暮らしていました。観音様にお願いすると「最初に触った物を拾いなさい」と、お告げがありました

 観音堂を出るなり、若者は転び、その拍子にわらをつかみました。「なんだこれ」とがっかりしましたが、大事なお告げです。大切に持っていました

 しばらくすると、今度は1匹のアブに付きまとわれます。あまりにもうるさいので、わらにくくりつけてしまいました。アブはわらの先でぶんぶん。しかし考えてみれば随分と器用です

 通りがかった子どもに所望され、アブ付きのわらをミカンと交換しました。これを振り出しに、ミカンは反物になり、反物が馬になり…。1本のわらは転げ転げて屋敷と畑になったとさ。ご存じ、わらしべ長者の物語

 さて、こちらの振り出しは、アブをわらに結ぶほどの手間もかけてはいまい。大手カレーチェーンが廃棄した冷凍ビーフカツを、産廃業者が横流しした事件である。元手0円が卸売業者を転げ転げて1枚約80円のカツに化けた

 購入業者の倉庫には、賞味期限切れのマグロやみそもあった。試食で問題がなかったからと販売していたそうだ。安くとも訳がありすぎの商品である。法や道徳をものともしない錬金術。廃棄物の捨て場所が消費者の胃袋とは。さしもの観音様でも、想像できなかったに違いない。