きのうの朝、通勤の途中、徳島市の徳島中央公園にある石碑の前で、ふと立ち止まった。美しい阿波の青石製の記念碑の上部で、散策する人たちを見守るのは、徳島市出身の考古学、民族学、人類学の先駆者・鳥居龍蔵博士(1870~1953年)
眼鏡をかけた鳥居博士を浮き彫りにした銅板の下には、その業績が刻まれている。目を凝らすと、「小学課程を終へずして独学自立を志し」とあった。博士は小学校も出ていないのに、苦学勉励の末、東大の助教授を務め、台湾、千島列島、中国を踏査し、優れた業績を残した。長くそう思っていた
ところが、博士は徳島市の新町小学校尋常小学下等科を卒業していたという。県立鳥居龍蔵記念博物館で、博士の卒業証書が見つかった
とはいえ、小学校を卒業しても、途中でやめても、学歴がものを言う世界で、さしたる違いはあるまい。ハンディに負けず、学問の道で偉大な業績を残した博士の努力に、あらためて深甚の敬意を表する
私事で恐縮だが、博士は小学校の大先輩に当たる。その小学校にはなじめず、独学で語学や歴史を学んだ博士の少年時代もしのばれた
今、受験生は試練の季節。失敗しても絶望しなくていい。心さえ折れなければ生きていく方法はいくらでもあるんだ。碑文に刻まれた博士の人生は、そう語ってもいた。