このところの冷え込みに、ひとつ温泉でも、と祖谷へ車を走らせた。ほころび始めたウメに湯 煙、露天風呂。こいつはいい
 
 はるばる訪れた人もまた、ふーっと大きな息でもはきながら、 伸 びやかな気持ちになっただろうか。ホテル入り口の「歓迎-様」の表示にはローマ字で書か れた 中国系の名が並んでいた
 
 昨年、日本を訪れた外国人旅行者は推計1973万7400人 、消費 額は3兆4771億円に達し、いずれも過去最高となった。最多は中国の499万人。 韓国40 0万人、台湾367万人と続く。「爆買い」の中国人旅行者は1人当たり28万円使 った計算に なるという
 
 増加の背景には、円安による訪日旅行の割安感、外国人向けの消費税 免税制度の拡 充、アジア諸国からのビザ発給要件の緩和がある。中国の景気減速が今後の懸念 材料になるとも
 
 かずら橋に近い食堂でアジア系の観光客と隣り合わせた。「祖谷そばは当地 のソウルフードで す」。案内のタクシー運転手が切れ切れの英語で懸命に説明していた
 
 訪日 客の大都市への偏り や受け入れ態勢など観光立国へ課題は幾つもある。ただ、詰まるところは 、あの運転手さんのよ うに、熱心になれるかどうかではないか。国に帰って客は話すに違いな い。「日本の運転手さん がね」と。話の数だけ、ひ いきも増えることだろう。