詩人の野口雨情(1882~1945年)を知らない若者が多いというので驚いた。名前にはぴんとこなくても、童謡を耳にしたことはあるはず

 よく知られているのは「シャボン玉」「赤い靴」などだ。詞をあらためて見直すと、もの悲しい作品が少なくない。幼い頃、歌いながらも、何かすっきりしなかったことを覚えている

 「シャボン玉」は<シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ(中略)生(うま)れてすぐに こはれて消えた(後略)>である。なぜ、子どもが喜ばない情景を詞にしたのか、と今になって考えるのは素人の浅はかさだろう。この作品は、生後間もなく亡くなったわが子への鎮魂歌ともいわれている。漂う切なさ故に、心に染み込んで、記憶として長く残るのかもしれない

 雨情は、北原白秋や西条八十(やそ)とともに童謡界の三大詩人と呼ばれた。日本全国を旅して、小唄なども各地で多く残している。徳島には3度来て、当時の11市町村で122節の唄を詠んだ。最後の来県は36年、ちょうど80年前である

 その時の作品を刻んだ碑が来月、徳島市内に建立される。<むかし忍んで徳島城の 松に松風絶へやせぬ>。往時がしのばれるのは名作の証しか

 雨情作品の底に流れるのは、古き良き日本だろう。それを、絶えることなく若い世代に伝えたい。きょう1月27日は命日である。