まさに「申酉(さるとり)騒ぐ」である。相場の世界では申年や酉年は値動きが激しいといわれる。東京株式市場で大発会早々から乱高下が続く
今後、どう推移するのかを読んだ投資家の売り買いで決まるのが株価。もともと「生き馬の目を抜く」世界だが、近年はよりシビアになっている感がある
私たちの暮らしにも「抜け目なく」はずいぶん浸透している。何かを買う前には、ネット検索に何時間もかけて、わずかな差の最安値を求める。ふるさと納税に大勢が群がるのは、実質的に寄付額以上の立派な返礼がもらえるからだ。小欄を含めて、生活の重心が「得したい」に近づいている
正反対の生き方をしているのが、1年ほど前まで南米ウルグアイの大統領だったホセ・ムヒカ氏だ。当時は「世界でもっとも貧しい大統領」と呼ばれた
質素な暮らしぶりや信条は「ホセ・ムヒカの言葉」(双葉社)に詳しい。豪華な大統領公邸には住まず、報酬のほとんどを寄付した。資産は自宅農場と30年近く使っている車1台のみという。「貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のことです」とは言い得て妙だ
ページをめくると「お金があまりに好きな人たちは、政治の世界から出て行ってもらう必要があります」とある。こちらは、申年早々から世間を騒がせている政界の面々に贈りたい言葉である。