一人の貧しい少女が、小さな赤い財布を残して息を引き取った。名前をハッティ・メイ・ワイアットという。米フィラデルフィア、1886年のことである

 死の2年前に、彼女はつらい経験をしている。混んでいるからとの理由で、教会の日曜学校への出席を断られたのである。粗末な服装だったからともいう

 財布には硬貨で57セント、それに短い手紙が入っていた。こう書いてあったそうだ。<もっとたくさんの子どもが日曜学校に行けるよう、あの小さな教会を大きくするのにこれを役立ててください>(「英語で泣けるちょっといい話」アルク)

 現在のレートで70円足らず。その当時でも、ささやかな額ではあったろう。しかし、それだけためるのに、どれほど苦心したか。この話が広まると、教会に寄付が集まるようになった。土地を提供しようという人も現れた。教会の財政では十分な代金が払えない。そう告げられた地主は言った。「57セントでいいんだよ」

 その地に今、数千人を収容できる教会や、一度に何百人もが学べる日曜学校が立つ。彼女の優しい心が多くの人を動かしたのだろう

 東日本大震災の際、世界からたくさんの支援が寄せられた。無論、台湾の人たちからも。57セント-。優しい心は、彼女だけの持ち物ではない。地震で救いを待つ人がいる。今度は届ける番である。