身なりはみすぼらしいが、実は因州鳥取の豪商で、お金が有り余って困っとる。門から玄関まで、かごなら4日、千両箱は漬物の重しに…。「うそじゃありゃせん、ほんまじゃで」

 こんな落語「高津の富」の主人公が、宿屋の主人に富くじを売りつけられる場面。「富とはなんじゃいな。1番になったって、千両出しゃ堪忍してもらえるのかえ」「だんさん、えらい間違うとります」「くれるんやったら、いらん。漬物石は、たんとありますで」。なけなしのお金を守ろうとする主人公の、せめてもの抵抗がおかしい

 当たると損をする宝くじなど、あろうはずがない。ところが、国債なら今、「損」でも買いらしい。長期金利の代表的な指標である10年国債の利回りが初めてマイナスとなった

 満期まで持っていたら損失が出る。ならば買っても売れるのか。そこは前例のない大規模な金融緩和のこのご時世。日銀がさらに高値で引き取ってくれるはずと、お金は国債に向かっている

 常識外れの相場である。いつまでも続くわけがない。「国債バブル」。はじけたときの反動の大きさを思えば身震いがする

 大ぼらに引っ込みがつかず、結局買った富くじが大当たり、一発逆転となった主人公。そんな落ちなら申し分ないけれど。黒田バズーカ、その行く先は2%の物価上昇か、それとも。