刑法犯の認知件数が昨年、戦後最少となったという。「おれおれ」や「架空請求」といった特殊詐欺の被害がいまだに後を絶たない中、実感はしにくいものの、治安は改善しているようである

 「市民の防犯活動や防犯カメラの増加など、犯罪を警戒する地域社会の目が密になった結果」と警察庁。戦後最少は喜ばしいが、防犯カメラのおかげもあってとは少々興ざめだ

 警察が設置したカメラだけで全国に1400台近く。警視庁の一昨年のまとめでは、507の事件で画像を活用し、半数以上で解決に結びつけた。確かに効果はあるのだろうが

 作家ジョージ・オーウェル原作の映画「1984」は全体主義国家や監視社会の恐怖を描いている。21世紀の今日、この手の批判は、もう聞き飽きたとの反論は承知しつつ。作品に登場する国民支配の道具で、常に国民を見張っている「テレスクリーン」と防犯カメラが、だぶって見えて仕方がない

 自治体や企業の分を含め、数え切れないカメラがいつも私たちを見詰めている。そうでなくともネット社会の今、何かの拍子でプライバシーは丸裸にされてしまうのである

 携帯電話のカメラも、現代版テレスクリーンの一つだろう。明日、目覚めれば、自分の意図しない画像が出回っているかも。1億総監視社会。そんな言葉が浮かんでは消える。