「すべて言葉は惜しみ惜しみ言うべし」。江戸時代の僧良寛さんは言葉の大切さをそう説いている。「駟(し)も舌に及ばず」とは論語の一節だ。一度、口から出た言葉には、四頭立ての馬車でも追いつかない
 
 自民党の丸山和也参院議員が参院憲法審査会で「今、米国は黒人が大統領になっている。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ」と述べた。オバマ米大統領への偏見とも受け取られかねない
 
 丸山氏は記者会見し「誤解を与えるような発言をした」と陳謝したが、それで済むものではあるまい
 
 弁護士出身の丸山氏は党法務部会長で人一倍、人権に気を使うべき立場だ。一方、米国はとりわけ人権と人種差別に厳しい国である。同盟国の政治家の発言をどう思うだろう
 
 「白人でも黒人でもなく、金持ちでも貧者でもなく、共和党でも民主党でもない一つの米国をつくろう」。2004年の民主党大会で演説したオバマ氏は、こう訴えて注目を浴び、4年後の大統領選で勝利した。当時のベルルスコーニ・イタリア首相が、勝ったオバマ氏を日焼けしていると評し「人種問題に鈍感」と批判されたことを思い出す
 
 古来、「口には関所がない」といい「口は禍(わざわい)の門」ともいう。ならば心に良識の関所を設けたい。思いつきではなく、練りに練った言葉なら、惜しみ惜しみ言っても十分に伝わる。