夜空にM78星雲を探したのは、せいぜい今の40代ぐらいまでかと思っていたら、そうでもないらしい。ウルトラマンが生まれて今年で50年。制作は続いており、昨年の「X(エックス)」で計33作になる

 「最も派生テレビシリーズが作られたテレビ番組」としてギネス世界記録にも。これまでに米国や中国、ロシアをはじめ100カ国以上で放映された

 草創期の裏話を古谷敏さんが半生記「ウルトラマンになった男」(小学館)で回想している。大部屋俳優とはいえ、顔も出せない、ぬいぐるみを着ての演技には抵抗があったという。体もぼろぼろで、もうやめようと乗った撮影所へ向かうバスの中、目を輝かせた小学生の話題は一つ-

 夢を育む仕事だったことに気づかされ、降板を思いとどまったそうだ。<ウルトラマンは、子供たちに助けられた。ウルトラマンは、子供たちに感謝した。太陽がまぶしかった>

 ジェームズ・ディーン「理由なき反抗」に倣った格闘姿勢、腕を十字にする必殺技スペシウム光線の練習は日に300回。作品に懸ける、古谷さんら大勢の人の熱意がウルトラマンに結晶した

 雪山怪獣ウーの悲劇など一筋縄でいかない筋書きは、沖縄出身の脚本家、故金城哲夫さんらによる。子供相手だからと手を抜かない大人の真剣さが、発達途上の柔らかな心を揺さぶったのだろう。