本紙連載中の「ことば遍路」で、作家阿川大樹さんが、フランスのモラリスト、シャンフォールを引いていた。<機会が二度扉を叩くなどとは考えるな>。好機は何度もやって来ない

 扉を開けるに開けたが、随分と暇がかかったとしたらどうだろう。徳島県をはじめ全国の複数の自治体に爆破予告メールが送られた事件で、脅迫文を確認するまでの時間に大きな差があることが分かった。本紙記者の調べでは、公表していない1市1区を除いて、最短はさいたま市の8分後だった。届いたのが業務時間内で、気づくのも早かったらしい

 職員退庁後の徳島県は12時間13分後。閉庁日の仙台市は、日曜をまたいで36時間15分もかかっている。狂言だったからよかったものの、本当なら1分1秒を争う。早期対応の機会をみすみす逃したのは危機管理上、問題ではないか

 ともいえまい。来るともしれないメールを、県庁各課で昼夜監視せよというのも無理な話である。庁舎の見回りに人を割く方がよほど現実的だ

 ただ、今回の件、これで終わらせるのはつまらない。業務時間外の危機管理、想像すれば幾らでも課題があるはずである

 小さな異変に大きな教訓を読み取る。それがプロの行政職員だろう。一度あることは二度ある、二度あることは三度。降り掛かる災難はメールだけとは限らない。