よくあるでしょ「昔は良かった」という式の議論。たいていの場合、まやかしだけど、いにしえの日々、うらやましいな、と思うことはあるわけで

 その一つが定年退職の年齢である。長く続いた55歳。そんな年から悠々自適なら最高だ。ただ、うちのじいさんのことを思い浮かべてみると、70過ぎまで日雇い仕事、一升酒くらって寝て起きてまた。悠々自適にも、さまざまな形と苦労があるわけで

 男性よりも長い女性の平均寿命が80歳を超えたのは1984年。それが今や男性81歳、女性87歳。加えて健康年齢も伸びており、定年退職の年齢が上がるのも道理である。でもね、とも思うのだ

 日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、日鉄日新製鋼の鉄鋼4社が定年を60歳から65歳に延長する。少子高齢化の進展で、他業種にも同様の動きが広がりそう

 ダイキン工業は定年を65歳まで延ばし、70歳まで再雇用する方向だ。こうした形態を採用する企業はどんどん増えて、数年たてばニュースにもならないのだろう

 労働人口の減少や年金支給開始年齢の引き上げに対応する。硬く言えばそうなるが、実際、時間はあっても先立つものがないと、悠々自適もかなわないわけで。元気なうちは働けと、そしてその場があるのはありがたいが、老後はもう少しゆっくりと。そう思えばため息も出る。