転じて難題や難問を指す「ゴルディオスの結び目」は、古代リュディア王の伝説に基づく。王は神殿の柱に戦車を固く縛って言った。「これを解いた者が、アジアの王になる」

 紀元前4世紀、後に西アジアを支配するアレクサンドロス大王が、どんなつわものも歯が立たなかった結び目に挑んだ。ほどけないとみるや短剣を一振り。「運命とは、自らの剣によって切り拓(ひら)くものだ」

 ベストセラー「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)にも見える故事である。著者の哲学者岸見一郎さんが紹介し、話題のアドラー。日本では知られていないが、フロイトやユングと並ぶ心理学者らしい。その説くところ常識という結び目を断ち切る新鮮さにあふれる

 <人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである><いまのあなたが不幸なのは自らの手で「不幸であること」を選んだから。「幸せになる勇気」が足りていない><人生における最大の嘘(うそ)、それは「いま、ここ」を真剣に生きないこと>

 世界はどこまでもシンプルで、誰もが今日からでも幸せになれる。そう説くアドラー心理学。無論、うなずく人ばかりではあるまい

 アドラーに限らず、雑誌から学術書まで本には幸せのヒントが隠れている。そう考えれば、冬の時代といわれる書店の書棚は宝箱。足りないのはあの1冊に手を伸ばす勇気か。