子どもたちが自主的な判断で津波の難を逃れた「釜石の奇跡」。佐々木守さん(61)は、当時のまちの防災課長。震災の経験を全国に伝え続けている。ただ、語るのは奇跡ではない。「釜石の失敗」である。岩手県釜石市、死者・行方不明者1040人
 
 いざとなれば即避難。しっかり意識付けをしないと。防災課長に就くや、自主防災組織の整備や訓練に力を入れた。激しい揺れに襲われたのは、それから2年後。意識改革も半ばのことである
 
 津波の恐ろしさ。市民への啓発が不十分だった。大勢の犠牲者が出たのは行政がきちんと対応してこなかったから、と今も悔やむ。講演では必ず言う。「私は防災担当者としては失格だ。できるのは、生き恥をさらしてでも失敗を伝えることだ」
 
 市のハザードマップでは津波浸水想定エリア外とされていた地域で、多くの死者が出た。防潮堤や防災設備も過信してはいけない-
 
 世論調査では、被災地への関心が低くなっていると思う人が8割近くに上る。防災意識も低下してはいないだろうか。南海トラフ巨大地震が迫る地に暮らすわれらですら、どす黒い海に街がのみ込まれる怖さを、忘れかけてはいないだろうか
 
 <海鳴りはかえれぬ人の相聞歌>(菅原れい子)。防災とは、先立った人の声を聞く作業でもある。きょう東日本大震災から5年。