人工知能対人間。どちらが優れているか。永遠のテーマの答えは容易に出そうもない。囲碁ソフト「アルファ碁」が、世界的強豪の韓国人プロ棋士、イセドル九段との5番勝負に3連勝し、勝ち越しを決めた。広大無辺の囲碁の宇宙で、人間が人工知能に敗れたのは、やはり悔しい

 相手は過去の膨大な対局情報の蓄積と判断力を誇るモンスター。なすすべもなく人間が敗れ去る悪夢のような光景が浮かんでいたが、李九段が4局目で一矢報いたことで、ほっとした。ソフトと人間の戦いには、未来社会を支配する人工知能と人類の死闘を描く映画のようなスリルがある

 一足早く人工知能の猛威にさらされた将棋では、人間が巻き返しつつある。将棋のプロ棋士とソフトによる団体戦の電王戦では昨年、3度目で初めてプロが勝ち越した。ソフトの不備や弱点を突く人間ならではの戦略も面白かった

 ソフトに負ければ、囲碁も将棋もプロ同士の対局の興趣がそがれるとの危惧があるが、杞憂(きゆう)だと思いたい。驚くことに、将棋の棋士は人工知能ならではの指し手を取り込んで、進化し始めているのだ

 「アルファ碁」側の責任者は開発目的として「社会の難題解決」を挙げた。人間と人工知能が競い合う中で、医療などへの応用に発展させて未来を切り開く。とすれば、究極の勝者は両者であろう。