「ためにする」の下に「議論」なり「批判」なりが付けば、これはもう、およそまっとうな議論や批判とはいえない。そこにはおおむね、よこしまな考えが忍び込んでもいるものだ
 
 消費者庁移転をめぐって昨日、神山町で試験業務が始まった。17日まで、板東久美子長官も滞在して課題を洗い出す。始まった早々、失礼とは思うが、移転できない理由を探す「ためにする」試験にならないよう願う
 
 疑心暗鬼になるのも大目に見ていただきたい。「徳島県のさまざまな強みを見せて」。長官にそう迫られると、少々たじろいでしまうのである。文化庁の移転が決まった京都のような強みは、あいにく持ち合わせていない
 
 もちろん、屈指のブロードバンド環境といった利点はある。ではなぜ徳島でなければならないか。多数の国宝を持つ古都と違って、肝心のその点が弱い。関係団体の批判にも、耳を傾けるべき点が多い
 
 言われる通り本県は第一級の田舎である。しかし、裏を返すと最大の強みかもしれない。徳島でできることが、他でできないはずはなかろう。移転が実現すれば、東京一極集中を突き崩す強力な先例となる
 
 集中の弊害が叫ばれて久しい。いつまでもルビコンのほとりにたたずんでいて国の在り方が変わるわけがない。一官庁の論理を超えて、日本の「ためになる」移転を。