何が最もつらかったか。「それは夢を奪われたことだ」。半島での24年。こんな仕事をしたい、子どもをこう育てたい…。数ある夢を、みんな諦めなければ生きてはいかれなかった

 きのう、拉致被害者・蓮池薫さんの講演を聴いた。核弾頭の爆発実験と弾道ミサイル発射実験を早い時期に実施する。北朝鮮がそう宣言したばかり。一向に挑発をやめようとしない姿勢に、拉致問題の解決も遠のいたように見える

 それは違う、と蓮池さんは経験をひもときながら言う。あの国は変化を見せるときこそがチャンス。国際社会による制裁が続けば、やがて対話へと追い込まれて行くはずだ、と
 
 事態は一刻を争う。被害者の家族は高齢化している。核問題の解決には時間がかかろうが、待ってはいられない。今こそ、あらゆる可能性を追求していくときである。「核に拉致を埋もれさせてはいけない」

 もう日本には帰れない。全てを諦めたからこそ生きていられたという。今は違う。残された被害者は「帰れるかもしれない」というほのかな希望と絶望のはざまで、日々を過ごしているはず。精神的に耐えられるかどうか

 政府認定の拉致被害者は17人。取り戻せたのは5人。可能性が排除できない特定失踪者は徳島県関係9人を含む約880人に上る。家族との抱擁を夢に終わらせてはなるまい。