うそはうそを生む。一つのうそをつき通すには、他に二十ばかりは必要だ、といったふうなことを書いたのは、確か英国の作家スウィフトだったか。「ガリバー旅行記」のあの人である

 コメンテーターで経営コンサルタントのショーン・マクアードル川上さんに思わぬ疑惑が持ち上がった。欧米の一流大学出身との触れ込みだったが、どれもこれも誤りという

 本人も認め、テレビやラジオの番組を降板した。高学歴で端正な容姿。虚像は崩れたわけだが、的確なコメントで人気者になるあたり、大学へは行かずとも相当な努力をしたのだろう

 もとより、うそは勘弁願いたい。ただ、われながら情けないのは、学歴詐称と聞いた途端、全てが色あせて見えたことだ。まずはコメントの質で判断するべきだろうに。これは一般化してもいいと思うが、人は肩書や権威に弱い

 雑音に惑わされず、事実にしっかり耳を傾けているか。省みれば見ていたのは肩書や権威だけ。そんな例は枚挙にいとまがない。詐欺という犯罪が成立するのも道理である

 ガリバー最後の旅、馬の国には「うそ」や「偽り」といった言葉は存在しないらしい。そうもいかない人間界。せめて格言辞典のこんな警句をポケットにしのばせておきたい。<うそをつけばはるか遠くまで行けるが、帰って来ることは望めない>。