南北のアメリカ大陸がヨーロッパを中心とする「世界」にのみ込まれていくのは、15世紀末になってのことである

 世界史の転機となった大航海時代、グローバル化の波に洗われ、大陸の主人は「新大陸」を目指した欧州人に取って代わられた。征服された先住民にとっては悪夢というほかない

 オバマ米大統領がキューバを訪問した。現職の大統領としては88年ぶりという。昨年の国交回復以来、関係正常化への流れは急。渡航客の急増で、首都ハバナではホテルが飽和状態になっているそうだ。観光需要を当て込んで、はや米大手ホテルチェーンが進出を決めた

 キューバの平均月収は約25ドル(2800円)。教育や医療は無料で、食料の配給もあるから単純比較はできないが、それでも暮らし向きは楽ではあるまい。市民の期待も、米国がこだわる人権問題より、生活改善への関心が圧倒的に高いとされる

 キューバ流社会主義の転機。関係が深まれば、おのずと米国流の「自由」もなだれ込んでこよう。それは、とびきりの繁栄を享受できる自由であり、みじめな路上生活を送る自由でもある

 零落する恐れがあっても、筆者がかの国の人なら自由を選ぶ。「国境なき記者団」の報道の自由度ランキングで、キューバは169位。中国や北朝鮮と変わらない。これでは仕事になりやしない。