また一から。白紙撤回とはそういうことである。計画が持ち上がって20年余。この街ではホール一つ建てるのに、まだまだ時間が必要らしい
事実上、音楽芸術ホールを含む新町西地区再開発事業の是非を問う住民投票ともなった徳島市長選で、反対を掲げる元四国放送アナウンサー遠藤彰良さんが当選した。民意ははっきりした。事業費225億円のほとんどを公費で賄う現計画は、もはや頓挫したといっていい
かつて、自治体がぜいたくなホールを競って建てたころがあった。口の悪い落語家が「文化の程度の低いところほど立派なんだよ」と、やゆしたものである。ただ、身の丈にあったホールは、街の必需品といえる
市文化センターは既に閉館した。新たな計画をつくるにしても、急場をどうやってしのぐのか。新市長の知恵の絞りどころだ
新しいカンバスに新しい絵を描く作業が始まる。出来上がった絵の巧拙をうんぬんしていればよかった今までとは違う。中心市街地の活性化をはじめ、その作業の難しさは20年余の歳月が示す通りである。この際、ホールや再開発の計画練り直しに、県も引き込んでみてはどうだろう
「成功の秘訣(ひけつ)を問うな。なすべき一つ一つに全力を尽くせ」。米国の実業家ワナメーカーの言葉だそうだ。成功とはそうやって招くそうですよ、遠藤新市長。