<桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり>岡本かの子。人の命の尊さを思う春である。ベルギーの同時テロで負傷して入院中の邦人男性が意識を回復した
 
 一方、誤った万引記録に基づく進路指導の後で自殺した男子生徒は、遺影となって卒業式に出た。生徒と真剣に向き合い、間違いに気づき、自殺を防げなかったか。そう思ううち、かの子の歌に心引かれて徳島市の徳島中央公園に足を運んだ
 
 きのうの昼下がり、公園は花見を楽しむ家族連れらで大にぎわい。桜の花に、花見客が吹く虹色のシャボン玉が映える。はしゃぎ回る子どもたちも桜に負けず、命の花を咲かせようとしていた
 
 徳島地方気象台が桜の開花を発表した。平年よりも2日遅い。日本列島を北上する桜前線は、人の世の習いに例えられる。<年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず>。「私たちも桜前線だね」は、年度末にそろって職場を去る退職者たちが口にする言葉である。桜の花に寄せる思いには人生が映る
 
 安倍晋三首相もきのう、官邸で花見をしたそうだ。心に何が浮かんだか。還暦を過ぎて意気軒高な首相は、もう一花も二花も咲かせたいようだ。衆院解散は「頭の片隅にもない」と否定しているが、解散風は一向にやみそうもない。先生方も選挙区の桜を見る機会が増えるだろう。