甲斐(山梨県)の武田信玄と越後(新潟県)の上杉謙信といえば、戦国時代、何度も国の存亡をかけて戦った宿敵同士だ

 それなのに、山国で塩に困っていた信玄に、謙信が塩を送ったという逸話が生まれた。「敵に塩を送る」はこの話に基づくが、日本人の心情に訴えるだけでなく、いかに塩が大切かも教えてくれる

 今、赤いキャップの瓶入り「食卓塩」(100グラム)は料理の名脇役だ。四角い箱の「クッキングソルト」(800グラム)を買うと、当面、塩は切らさないという安心感がある。残念だが、きょうの出荷分から、瓶入りが税抜きで68円から91円に、箱入りが136円から184円に値上げされる。メキシコからの輸入塩の価格上昇が要因だ

 たばこ、トマト調味料、アイスクリームと、この春は値上げラッシュ。医療では、紹介状を持たずに大病院で受診すると初診時、5千円以上の追加料金が必要になる

 政府やメーカーにも言い分はあろうが、国民は苦汁をなめる気分だ。誰かが塩を送ってくれるわけもない。生活を支える尊い労働を、「塩にて淵を埋(うず)む如し」のように、やってもかいのないものにしてはならない

 生活防衛のための買い控えが消費不振に輪をかければ、景気が失速しかねない。アベノミクスを看板に掲げる安倍さんもいよいよ正念場を迎える。次の一手は。