頭にきて、隣国の大統領を「ばあさん」と呼び、外交問題になった。<やっちまった。大失態だ>。当人は大いに反省したらしい。嫌いなネクタイを締めずに通す服装同様、歯にも衣を着せず、何度も舌禍事件を起こしている

 先日、当欄でも紹介した南米ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が来日した。<貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に多くを必要とし、もっともっと欲しがることです>(「ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領」角川文庫)。毒舌と名演説と。一筋縄ではいかない

 <自分の考えに従って暮らそう。そうしなければ、暮らしぶりに合わせて物事を考えるようになってしまう>。元反政府ゲリラの闘士。逮捕されること4回。トイレもない独房で、13年にも及んだ最後の獄中生活で学んだという

 目新しい哲学ではない。古代の賢人も説く清貧の思想は、語り手を変えて繰り返し流行している。その都度、胸を打つのはなぜか。つまりは、いつまでもその境地にたどりつけないからだろう

 もっと売らねば、もっと買わねば。そんな社会にどっぷり漬かって、抜け出すのはなかなか難しい

 それで幸せになりますか、それで地球は持ちますか-。ムヒカさんの問いは明快だ。いいえなりません、いいえ持ちません。答えは、分かっているのだけれど。