物の名はうまく付いていると感心した小話を一つ。<東京駅で「おーい」って言うて、東北の方から「おーい」って返ってくるのが「やまびこ」、関西の方から返ってくるのを「こだま」って言うの>

 元文化庁長官で臨床心理学者として知られた河合隼雄さんは、ふっとした笑いが起きるやりとりが好きだった。作家の小川洋子さんとの対話「生きるとは、自分の物語をつくること」(新潮文庫)にある小話だ

 先日、新幹線のホームで「のぞみ」を待つ間、これを思い出して、ふっとした笑いが込み上げてきた。傍らにいる人につい教えたくなるような機知に富んだ言葉、小さな物語

 人々の悩みに寄り添い、望みを持ってそばにいること、「物語づくり」を大事にしてきた河合さん。その奥深さにはたどり着けないが、子どもたちの心をほぐすユーモアのセンスは磨きたいものだ

 <入学のどれも良き名のよき返事>松倉ゆずる。あすは県内の多くの小学校で新1年生を迎える。真新しい服に身を包んだ子どもたち。その一人一人の名に、元気に育てとわが子を思う親の願いがこもっている

 一人一人が、良き友の名、良き先生の名を覚え、物の名を覚えていくだろう。想像の翼をどこまでも広げて。あすは自分に続いてきた物語、自分からつながる物語、それを共に紡ぐ始まりの日である。