食中毒の原因として病原性大腸菌は重要な細菌です。感染すると激しい下痢や血便などの消化器症状を示すとともに腎臓や中枢神経系の合併症を併発することがあります。今月は病原性大腸菌について考えてみました。

 人の腸管内に存在する大腸菌は常在菌として消化吸収、ビタミン合成、病原微生物の侵入防御に働き、病原性はありません。しかし一部の病原性を持つ大腸菌は消化管感染症、即ち食中毒を起こすことがあります。

 病原性大腸菌の中でも問題になるのはベロ毒素とか志賀毒素と呼ばれる毒素を持つ腸管出血性大腸菌です。この大腸菌は主として牛など家畜の腸管内に一定の割合で存在します。毒素を持つ家畜の糞便で汚染された水や野菜、生肉や内臓を加熱不十分な状態で食べると食中毒を起こします。

腸 管出血性大腸菌による食中毒は1996年に大規模な集団食中毒が発生しました。その後も年間3000~4000例の食中毒が報告されています。血清型による分類ではO157が最も多いのですが、O26、O103、O111などO157以外の血清型が増加する傾向にあります。

 汚染食物の摂取後3~7日すると激しい水様性下痢や腹痛で発病し、次第に水様鮮紅色の血便となり、重症では便成分が少なく、出血性大腸炎となります。発熱は軽度ですが、重症では下痢の回数が多く10回以上になることもあります。

 治療の基本は脱水症に対する処置ですが、腎臓障害を合併した場合には過剰の輸液が腎不全を悪化させることがあり、腎臓症状の有無を十分に観察することが大切です。