病原性大腸菌の中でベロ毒素とか志賀毒素と呼ばれる毒素を持つものを腸管出血性大腸菌と呼びます。腸管出血性大腸菌の付いた食品を摂取すると、この毒素は腸管壁を傷害して激しい下痢や血便などの消化器症状を引き起こします。その後に腎臓や中枢神経症状を起こすことがあり注意が必要です。

 腸管出血性大腸菌の持つ志賀毒素は血管内皮細胞にある受容体に結合して、内皮細胞を障害し壊死を来します。血管内皮細胞が障害されると血管内で血栓が形成され、これによって血小板が消費されて血小板が減少します。また血栓部分の血管内を赤血球が通ることで機械的に溶血して貧血になります。

 このような毒素に対する受容体は腸管細胞、腎臓、中枢神経系に多く存在しますから、腸管、腎臓、中枢神経に症状が出やすいのです。

 食中毒として激しい下痢や血便が見られて4~10日後に貧血、出血斑、尿量減少、腎機能障害、血尿、蛋白尿などが見られた場合には尿毒症症候群の発生と考えて厳重な管理が求められます。さらに意識障害やけいれんが見られた場合には中枢神経症状として注意が必要です。

 腸管出血性大腸菌による食中毒の場合でも消化器症状のみであれば予後はそれほど悪くはありません。溶血性尿毒症症候群を併発すると生命に関わることがあり、治った後に慢性腎不全などの後遺症を残すこともあります。

 病原性大腸菌による食中毒は予防できる病気です。牛などの家畜の腸管内には病原性大腸菌が存在する可能性があります。汚染された水や野菜、生肉や内臓などの摂取には十分な注意が必要です。