熊本県。4月14日午後9時26分。起きた災害と起きるかもしれない災害の間を生きる、私たちの胸に新たな場所と時刻が刻み込まれた。きのうときょう。同じ顔ぶれで食卓を囲み、くつろいでいたその時、日常を打ち砕かれた家族も多かった
命が奪われた。孫に優しかったおばあちゃん、近所の子どもをかわいがった主婦、気軽にあいさつを交わしていた女性。別れを告げる間もなく、9人が亡くなった
一人一人に、ついその時刻まで確かな人生があった。わが身、わが事だったら…そう思うと、いたたまれなくなる
夜を徹して助けを待つ人を救う作業が続いた。余震におびえ、冷え込みに震える家族、母親にしがみつく幼い子。命を救ってほしい、肩に毛布を掛けて励ましたい。流れる映像を前に声を掛け続けた人もいるだろう
ボランティアに行く準備を始めた人、既に知人に飲料水を送り、お見舞いの言葉を送った人もいるかもしれない。行く、送る、祈る。無力感にさいなまれることなく、自分に今できることを探したい。災害を経て紡いできた絆に息を吹き込まなければ
阪神大震災の発生は21年前、東日本大震災は5年前。忘れてはいないのに災害は不意にやって来る。「災間」を生きる私たち。何が起きてもおかしくないような、この世を歩いていくには、備えと覚悟が要る。