決まってしまえば「なるほどね」という気にもなる。「寡黙でありながら非常に多弁。日本人らしさを秘めている」。言われてみれば、その通りに見えてくるのだから、随分いいかげんなものである
各種アンケートで人気の低かった「組市松紋(くみいちまつもん)」が、東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムに選ばれた。意外に感じた人も多かろう。正直に言うと、筆者の属する論説委員会でも、支持する記者はいなかった
それでも、これまた随分現金な、とあきれる方もおられようが、本県にとっては最善の選択となった。これから2020年にかけ、藍色のエンブレムが至る所で躍るのである。藍と言えば阿波、阿波と言えば徳島。消費者庁といい、いい風が吹いてきた
市松に類する模様は埴輪(はにわ)の時代からあり、この名になったのは江戸期。「享保の改革」の将軍徳川吉宗の治世だ。江戸中村座の歌舞伎役者・初代佐野川市松が「心中万年草」で身に着けたはかまの石畳模様が、一般に流行したらしい
盗作騒ぎで、すったもんだした揚げ句の、平成の市松模様。多くの人に受け入れられるようになるには、大会に向け、いかに機運を高めていくか。これにかかっていよう
メーン会場でもみその付いた、いわく満載の五輪である。日本らしく粋に品よく。終わりよければすべてよし、といきたい。