「虎は死して皮残す。人は死んで名を残す」。調子のいい啖呵売で、フーテンの寅さんが虎の絵を売っていたシーンを思い出す

 悲しいかな今、売られているのは日本を代表するメーカーであり、企業人としての誇りだろうか。シャープ本体、東芝の白物家電事業。そして、今度は、三菱自動車が存続に関わる事態になった

 燃費データ改ざん問題が泥沼の様相だ。25年間も不正な方法で燃費データを計測していたことが分かった

 商売人には最低限のモラルがいる。寅さんが売る商品はせいぜい千円程度だ。「かわいい女房、子どもが口を開けて待っている」。そう言われれば、客も口上の誇張は承知で買ってしまう。いわば、”聞き賃“も込みの商売だ

 一方、三菱自に弁解の余地はない。信じた客を欺き通したのだから。相川哲郎社長いわく。「当時これで良いと思ってやり始めた方法が、伝承されて疑われずにやられていた可能性もある。自浄作用が働かなかった」。不正が「伝承」されるとは、一体どんな会社なのだろう

 だまされた客の怒りは収まるまい。気になったのは、相川社長の窮地に陥った政治家のような言動である。「全く承知していなかった」。何だって? それを言っちゃあ、おしまいだよ。なんたって、企業のトップなんだから。そう、寅さんふうに言いたくもなる。