長野県上田は、すべて山の中。ただ、急峻(きゅうしゅん)な山岳地帯を行く木曽路と違って、周辺、広々とした盆地になっている。すなわち開放感がある。武将・真田氏の古里である

 本拠・上田城は千曲川のそばに立つ。ここで2度、徳川の大軍勢を撃退している。もっとも、現存するのは後代の作。往時の姿は想像するほかない。発掘調査では金箔(きんぱく)瓦も出土しているから、なかなか、きらびやかだったのかもしれない

 大河ドラマの人気で、城内はにぎやかだった。市立博物館で父・真田昌幸の肖像を見た。草刈正雄さんが演じる、あの人である。しわ深く、いかにも策士然としている。はかりごとを巡らせ、遠く離れた戦場で勝利する。「勝事は千里の外に決す」。希代の戦略家にふさわしい漢書の一文が添えてあった

 親子は関ケ原の戦いで東西に分かれた。家康に従った長男信之は大名となり、93歳まで生きた。豊臣方についた昌幸と次男信繁(幸村)は、高野山で閉居の身に

 信繁の人間くさい手紙が残っている。連歌を始めてはみたものの<老のがくもんにて成り難く候(そうろう)>。40代半ばで、このていたらく、とぼやいた男が名を残す大坂の陣まで、あと数年待たねばならなかった

 歴史を訪ねる。新緑のきらめきを浴びる。ボランティアもいい。仕事だよ、という人も。さあ、黄金週間の朝が来た。