近年の世界の出来事の中で、2001年9月11日ほど鮮烈に私たちの記憶に残っている日はないだろう。

 旅客機4機が乗っ取られ、2機がニューヨークの世界貿易センタービル2棟に激突、崩壊させたほか、1機がワシントン郊外の国防総省に突入、日本人24人を含む計約3000人が死亡した。徳島県人も犠牲になった。

 「米中枢同時テロ(9・11テロ)」である。イスラム過激派の国際テロ組織アルカイダの犯行で、アラブ・イスラム世界における米国の中東政策への反発からとされた。

 米政権は報復に突き進む。指導者をかくまっているとしてアフガニスタンのタリバン政権を空爆、対テロ戦争を開始した。

 テロが許されないのは当然だが、武力行使も決して容認できるものではない。それでも、米国は「テロとの戦い」を正当化し、イラク戦争も仕掛けた。戦いは泥沼化し、今も混迷状態が続いている。

 宗教や民族による差別、貧困による格差が世界にまん延している。暴力と憎しみの連鎖をどう断ち切るのか。国際社会は「9・11」で突きつけられたこの重い課題を克服できないでいる。

 第2次大戦後、世界は半世紀近くにわたり米国とソ連の両大国によって東西に分断されてきた。歴史が動いたのは平成に入った1989年だ。

 11月、東欧諸国での民主化運動により冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」が崩壊。翌月、米ソ両首脳が会談し冷戦終結を宣言した。さらに、2年後にはソ連が解体し、ロシアに変わった。

 米ロによる新時代の到来だ。が、実質的には米国の一極支配体制である。軍事・経済力で他国を圧倒し、世界を動かした。ただ、独善的な外交姿勢も目立ち、国際社会の反発を招いた。国際秩序は変質し、協調体制にも陰りがみえた。

 米国中心の世界地図を塗り替えたのが中国だ。驚異的なスピードで経済成長を遂げ、2010年には日本を抜いて世界2位の経済大国になった。軍事力も強大となり、米国と「新冷戦」とも呼ばれる覇権争いを繰り広げている。

 ロシアを含めた3国は際限のない軍拡競争に突入しつつある。日本など先進国は、軍縮への新たな枠組みを提示することが急務だろう。

 世界の脅威は軍事面だけではない。先進各国では移民・難民問題が深刻化し、ポピュリズム(大衆迎合主義)や排他的な風潮が広がっている。国際協調や融和より、自国の利益を優先させる考えだ。

 日本も人ごとではない。差別をあおるヘイトスピーチの解消に向けた対策法を16年に制定したが、差別的なデモや集会は各地で続いている。寛容さや多様性の否定は民主主義の危機につながる。いま一度、足元を見つめ直す必要がある。