田舎も案外騒々しい。郊外にある筆者の自宅周辺では、カエルが夜な夜な飽きもせずに鳴いている。恋の季節である

 現存する日本最古の歴史書、8世紀に成立した「古事記」にもヒキガエルが出てくる。なかなかの事情通で、海を渡ってきた小さな神が何者なのか分からず、困り果てていた大国主(おおくにぬしの)神(かみ)に「かかしが存じておりましょう」と助言した

 古事記を編んだ太安万侶(おおのやすまろ)は、地上のことであればことごとく知る神として、かかしを記す。水田には人が集まり、情報が集まる。古来、そんな場所だったのかもしれない

 案にたがわず、かかしは答えた。「少彦名神(すくなびこなのかみ)でございます」。大国主は、この神と手を携えて国造りに励むことになる。神々を引き合わせたヒキガエルとかかし。田の主たちに重要な役を担わせたのは、いかにも稲作で栄えた国らしい

 それでも、いつまで「らしさ」を保っていられようか。1人当たりの米の年間消費量は55キロほど。ここ50年余りで半減した。米さえあればという食生活が過去となって久しい。高齢化で食が細った影響もあろう

 もはや米の取れ高で国の豊かさが測れなくなった時代である。こんな米価ではねえ…。田の縁で耳をそばだてれば、農家の人たちのやりきれない声ばかり。カエルの大合唱が、瑞穂の国の行く末を危ぶむ、神々の早鐘にも聞こえる。