画餅、絵に描いた餅。自治体の防災計画にも、そういったところがないか。数字合わせで満足していないか。熊本地震の被災地を歩いて思う

 例えば「福祉避難所」である。通常の避難所では生活しづらいお年寄りや障害者といった災害弱者のため、専門的支援が受けられる高齢者施設などに設けられる。熊本市でも176の施設と協定を結んでおり、計画では1700人の受け入れが可能としていた

 ところが、地震発生当初、利用できたのは100人にも満たず、今も計画にははるかに届かない。もともと人手不足の介護業界。施設の機能に問題はなくても、被災した職員が多く、とても手が回らない状態だ

 助けを求める障害者の声に応えて、熊本学園大は学内に緊急の避難所を開いた。宮北隆志社会福祉学部長は「そもそも周知不足で、福祉避難所の存在自体が知られていない。東日本大震災を経験したのに、実際にはまだまだ至らない点がある」と言う

 翻って、徳島市はどうか。障害福祉課によると、21施設で1155人を受け入れる計画になっている。「熊本の実情は聞いており、再検討が必要だ」。担当者は見積もりの甘さを認める

 「熊本地震でも言われていたことなんだが…」。いずれ起きる南海トラフ巨大地震で、そんな後悔を口にせずに済むように今、被災地に学びたい。