思いのままに生きる。難しそうでいて、それほど難しいことではないのかもしれない。神山町に移住して6年になる瀧本昌平さんは、33歳の草木染め職人である

学生時代も含めて10年、都会で暮らした。「たくさん稼いで、たくさん使う」。そんな生活も否定はしないが、自然に近い場所で生きたい。そう思って故郷の徳島を見詰め直した

しかし、どう身を立てていくか。見渡せば、答えは故郷にあった。藍染である。自然に溶け込んで生きる。藍染なら応えてくれそうだ。京都の職人に弟子入りし、独立した

ジャパンブルーの微妙な色合いを調整するのは、いにしえからの発酵技術である。「自然の青は藍でしか出せない」。誇るべき文化を受け継いだ、職人としてのやりがいを語る。でも、大変なことも? 「そらそうです。お金、ないですもの」

携帯電話は欠かせない。車にも乗る。子どもだっている。田舎暮らしといえども、お金はかかる。ただ、うなるほど必要なわけじゃない。藍を植え、米を作り、野菜を育てる。手間を惜しまなければ十分やっていける

瀧本さんの話を聞いていて気づいた。踏み出すのは難しくないかもしれない。だが、これまで、どこまで真剣に人生と向き合ってきたか。肝心の「思い」が自分にはあるか。神山の山並みを眺めながら、しばらく考えた。