阿波手づくりおもちゃ館 館長 井村 雄三さん
◎元鳴門教育大学附属養護学校副校長
◎元四国大学生活学部准教授
◎四国大学附属幼稚園研究顧問

子どもも、大人も夢中になれる「おもちゃ」を伝えてゆきたい。
時代の移り変わりと共に子どもたちを取り巻く環境は大きく変化し、新しいおもちゃやゲームが次々と誕生しては消えていく今、それでも子 どもたちはさまざまな遊びを通してたくさんのことを学んでいます。
いつの時代にも色あせない「手づくりおもちゃ」の魅力とは?子どもたちにとっての「遊び」について井村雄三さんにお話しをうかがいました。

現在阿波手づくりおもちゃ館を開放するとともに「移動おもちゃ館」として県内外へ出向いている。平成16年から「おぎゃっと21」に参加するなど、手づくりおもちゃを通して子育て支援に尽力されている。

長年、障害児と現場で向き合い、子どもたちのための手作り教材の作成と使用方法を研究し続けている井村雄三さん。

現在は、平成8年に民家を改装してスタートした「手づくりおもちゃ館」を拠点に、県内外の特別支援学校や幼稚園、保育所等に自作のおもちゃを持って訪問する「移動おもちゃ館」を行い、子どもたちだけではなく、その理論や効果を学生や保育士などに伝える取り組みも続けています。
市場町にある手づくりおもちゃ館は、季節の訪れを一足早く感じることのできるのどかな田園地帯にあります。1階の工房には木工用の機械から小さなネジ、作りかけのおもちゃなど、まるでおもちゃ箱と道具箱をひっくり返したように物であふれています。2階には今まで井村さんが作ったおもちゃ等のコレクションが展示され、実際に手にとって遊ぶスペースもあります。
「当初は障害を持っている子どもたちが安心して遊べる場所を作りたいと始めましたが、今では幼稚園の遠足で遊びに来たり、高校生がここで作ったおもちゃを持って老人ホームを訪問したり、さまざまな人がさまざまな目的を持ってやってくるふれあいの場所になっています」時には障害を持つ子どもに優しくおもちゃを手渡す小学生の姿があり、また、子どもの成長が気になるお母さんがやってきて、子どもが遊ぶ姿を見ながら井村さんに意見を求めたりと、手作りのおもちゃを前にすると、誰もが障害や年齢の壁を忘れ、素直になれるのかもしれません。

大人が夢中で遊ぶ姿を見せて

声がかかればスケジュールの許す限りどこへでも出かけるという「移動おもちゃ館」は、退職してから3年以上続けている活動です。対象者 も行く場所もその時々で違いますが、同じなのは車のトランクに入る限りのおもちゃと道具を持って行くこと。週1回のペースで県内外を走り 回っています。
たとえば2カ月に1度訪れている那賀町では、11月は桜谷保育園へ平谷・木頭・木沢・延野の保育園児と先生が集まり、井村先生の訪れを心待ちにしていました。1月は木沢保育園に集まります。
「いつも少ない人数で遊んでいる子どもに違う場所、違う集団を経験させるのはとても貴重。そこで大切なのは私をはじめ先生たちが夢 中になって遊んでいる姿を見せること。たとえば積み木なら大人が一つのパターンを見せると、子どもはそれをきっかけにしてどんどんアイ デアを生み出してくれます」。
移動おもちゃ館では毎回、少しずつ違った内容を提供していますが、井村さんがこだわっているのが“簡単なおもちゃをたくさん!”。この場合の簡単とは一定の基尺(比率の決まったサイズ)で揃ったパーツのことで、井村さんは1:2:10の比率の積み木をたくさん用意して、ただ 積み上げるだけではなく、何通りものパターンを子どもたちに見せてから自由に遊ばせるようにしているそうです。

生活から遊びを生み出す

また、「暮らしの中には遊びがいっぱい!」というのも井村さんの持論です。
たとえばペットボトルにどんぐりを入れて音の変化を楽しむ。 段ボールでロボットを作る。家の中にある生活品を使って、お父さんやお母さんが遊びのヒントを見せてあげることが大切だと言います。
「市販のおもちゃに対象年齢が明記されていますが、ちょっとした遊び方の工夫で年齢や性別に関係なくおもちゃ楽しむことができます。この歳になってもそれを私自身が実践しています(笑)」。
今日も薪ストーブがパチパチと音を立てる工房で、道具とおもちゃに囲まれて夢中で作業をする井村さん。その目線の先には瞳を輝かす子どもたちの姿があります。

 

阿波手づくりおもちゃ館

◎住所:阿波市市場町興崎字北分228
◎開館日:日曜日(10時~5時)
※開館予定を変更する場合があります
◎入館無料:制作した場合は材料代実費
◎詳しくはホームページをごらんください
「阿波手づくりおもちゃ館」で検索
www.awa-omochakan.com

私たちは「はぐくみ徳島」の活動を応援しています
おぎゃっと21で活躍する各大学・専門学校の「はぐくみメイト」のみなさんの子育て支援活動を紹介します。

徳島健祥会福祉専門学校保育福祉学科

私たちは、「人を思う心」を持てる保育と福祉のプロを目指して勉強しています。入学当初から「経験から学びなさい」と先生から教えていただき、授業だけではなく、健祥会の保育園での見学・実習を通して子どもたちと触れ合い、たくさんのことを学んでいます。その学んだことを実践するために、もっとも役立っているのが、さまざまなボランティア活動です。自分が希望するボランティアを選択し、子どもからお年寄りまで地域の方たちと交流することは、何よりも貴重な経験です。

また、おぎゃっと21に参加することで、他校の活動に刺激を受けたり、共感したり、たくさんの方と充実した時間を共有できるのも素晴らしいことだと思います。

子どもを取り巻く環境が変化し続ける今、私たちはこれからも積極的に地域社会に出て、卒業するまでに一人でも多くの方と出会い、経験を重ねて行きたいと考えています。
はぐくみ徳島は出産や育児に夢の持てる社会づくりを推進しています。

主な事業
●次世代育成支援イベント「おぎゃっと21」(通年5/3・4アスティとくしまで開催)
「心とからだ、より豊かに、より健やかに」をテーマにした遊べる、楽しめる、学べるイベントです。
●地域子育て支援事業「はぐくみクラブ」&シンポジウム(イベントなど)
それぞれの地域にあった子育て支援事業を応援しています。
●子育て支援情報の発信
徳島新聞、フェイスブックなどで、はぐくみ徳島の活動および子育て支援情報を紹介しています。