<伊勢は津で持つ 尾張名古屋は城で持つ>。三重県は伊勢音頭の一節である。こう続く。<お伊勢参らば朝熊(あさま)をかけよ 朝熊かけねば片参り>

 亡くなった人の魂が昇るとされる朝熊山。伊勢志摩スカイラインの頂上付近、伊勢神宮の鬼門を守る金剛證寺(こんごうしょうじ)は、もともと弘法大師が開いたという。故あって現在は臨済宗。内宮門前町のにぎわいとは対照的な、閑静な禅寺である

 一生に一度は、と庶民が伊勢参りに恋い焦がれた江戸のころ。参宮を終えれば、この寺を回るのが一般的だったらしい。はるかに望む太平洋、手前に浮かぶ島々。絶景も拝める

 時間も費用もかけた伊勢の旅。セットともいえる金剛證寺を詣で損ねたそこつ者は故郷に帰り、からかわれたに違いない。「それじゃあ、片参りじゃねえか」

 伊勢志摩サミットが開幕する。世界経済を最大のテーマに、「パナマ文書」で衆目を集める課税逃れやテロ対策、南シナ海問題なども議論する予定だ。5回目のサミットで初の議長役を担う安倍晋三首相の意気込みも相当だろう

 1975年から続く主要国首脳会議。新興国の台頭で、セレモニー化も指摘される。メンバーに入れない大多数の国からは、こう見られているのかもしれない。「金持ちの国だけの、片参りじゃねえか」。先進7カ国、世界の課題にどこまで迫れるか。