予測は往々にして外れるが、南海トラフ巨大地震はそうはいかない。発生確率は30年以内に70%程度、時間の幅をもっと長くとれば、間違いなく起こる

 危機は膨らんでいる。海上保安庁などのチームが発表した分布図では、四国沖が真っ赤に染まっていた。色が濃いほど、地震を引き起こす地殻のひずみが蓄積していることを示す

 地上からの観測では精度に限界があり、洋上の観測船から海底のわずかな変動を測って、推定したそうだ。南海トラフ沿いのひずみの分布を詳しく解析したのは初めてで、「将来起きる地震を正確に想定するための重要なデータとなる」という

 研究が進むのは頼もしい限りである。巨大地震の実像に迫り、既に定着した緊急地震速報のような、減災につながるアイデアを積み上げる。いずれは発生日時まで予測できる日も来るかもしれない

 だが、どれだけ予測の精度が上がろうと、それだけで被害は減らない。夏に冬、真夜中に明け方、通勤通学中。いつ、いかなる場合に発生しても、逃げられる方策を考えておくこと。住宅の耐震化など日頃の備えも大切だ

 南海トラフ地震は列島の広範囲に被害を及ぼす。公の支援が遅れる可能性がある。自助、共助、公助。最も弱いのは自助だろう。最低でも3日分が必要とされる食料や水。家庭の備蓄、大丈夫ですか。