その名にうたかたの夢のような、はかない響きを聞くのは、あまりにも短い定めの命ゆえか。薄幸の佳人の名前ではない。理化学研究所のチームが発見し、命名した113番の新元素のことだ。「ニホニウム」。米国・ロシアとの競争に日本が勝って、命名権を獲得したのだから、むしろ幸運の証しである

 加速器を使って合成した人工の元素は、わずか500分の1秒で崩壊する。水面に浮かぶ泡の寿命にも及ばないが、壮大な宇宙誕生の謎の解明に役立つとの期待がかかる。軽い水素やヘリウムから重い金、鉛へ。元素の誕生は宇宙の進化を映す

 元素の命名は、日本科学界の悲願だった。1908年、故小川正孝博士が43番元素を報告し「ニッポニウム」と命名したが、誤りで取り消された。もうこの名は使えない

 そこで「ニホニウム」へ。理研の実験チームを率いた森田浩介・九州大教授は「研究は国民に支えられているので、日本という名を入れた」と述べた

 当初、有力視された「ジャポニウム」は語感に抵抗があったようだ。結果論ではなく、「ニホニウム」の方が優しい響きで、よく似合う

 外国の教科書の周期表に「nihonium」の元素記号「Nh」が、鉄や金と並んで載るのが誇らしい。100年がかりの快挙だと聞いて、永遠に刻まれるその名への愛着がまた湧いた。