つまらないことを尋ねるのは勇気がいる。しかし放っておけば疑問は大きくなるばかりである。ええい、ここはと、とくしま動物園に電話した。「キツネはコンコンと鳴きますか」

 答えてくれたのは、小川嘉弘学芸員。展示動物にキツネはいないものの、警察から預かった3匹を保護中とのこと。で、どうですか? 「うちのは鳴きませんねえ」。でしょう、やっぱり

 ただ、絶対に鳴かないとは断定できないという。犬や猫が喜怒哀楽、さまざまに声色を変えるように、キツネもさまざまな声を持つ。「コンコンと聞こえることがあるかもしれません」。少なくとも昔の人の耳には、そう響いたらしい

 「コン」は既に奈良時代、万葉集にも見える。「来む(来るだろう)」に通じ、掛け言葉としても重宝されたようである。国語学者山口仲美さんの「犬は『びよ』と鳴いていた」(光文社)に教わった。ちなみに、源氏物語の猫は「ねうねう」と鳴く。「寝む寝む」と、艶っぽい役どころだ

 タヌキが幅を利かせてきた本県でも、キツネの目撃例が増えている。先日の本紙地方面にも、吉野川北岸の第十堰付近で撮影された写真が載っていた

 里山の荒廃が指摘される。「近年、生態系に異変があるようです」と小川さん。コンコンと、どんな扉をノックして、キツネはやって来たのだろう。