白装束の背中は何も語らないが、黙々と歩く姿に、それぞれの人生を見てしまう。病気、失業、家庭の不和…。弘法大師と「同行二人」の旅なので、背中の重荷も少しは軽くなるかもしれない。四国霊場八十八カ所を巡る全長約1400キロの遍路道は、世界でもまれな環状の巡礼道だ

 逆打ちすると特にご利益が大きいとされるうるう年の今年、四国遍路の経済効果は、交通費・宿泊費・飲食費、納経費用など計1650億円に上る。うち、8割の1320億円が四国を潤す。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算だ

 先日、阿南市新野町の22番札所・平等寺を訪ねると、談笑する外国人遍路の姿があった。1921年、この寺を訪れた米国の人類学者フレデリック・スタール博士は、地元の子どもとどんなふうに触れ合ったのだろう。外国人遍路。きのうきょう、誕生したのではない

 「四国八十八箇所霊場と遍路道」の世界遺産登録は四国四県の悲願である。実現すれば世界中から遍路がやって来る。遍路が「HENRO」に

 思い出すのは11年前、徳島市であったシンポジウムでの出席者からの提言。登録に向けては「何が強みで何が弱みか」を押さえ、焦点を絞って光を当てることが必要だという

 遍路を始めて10年余り。この提言を探っている。もの言わぬ札所には、人を生かす力がある。