むしろ、言葉に記すと、世界は途端に不確かになる-。気の利いた文が浮かべば、誰かの受け売りではないかと疑って、心当たりの書籍を繰ってみる。やっぱり、あった。川崎洋さんの詩「言葉」の断片だった
終わりまで、もうあと数行。<私の「青」/はあなたの「青」なのだろうか?/あなたの「真実」は/私の「真実」?>
高額な海外出張費に公用車での別荘通い、政治資金の私的流用。数々の「政治とカネ」の問題が浮上していた舛添要一東京都知事が辞表を提出した。果ては都議会与党にも見放されての、後味のすっきりしない引き際である
「違法性はないが不適切」。幕引きを図った微妙な言い回しもかえって裏目に出た。あなたの「常識」と、都民の「常識」には、大きな隔たりがあった
問題となったような政治資金の使い方は舛添知事に限らない。噴き出す疑問にしっかりと応えていれば、もう少々謙虚に事態と向き合っていれば、ここまで追い込まれただろうか。開き直りとも思える対応で、自ら選択肢を狭めていった感がある
舌鋒鋭い国際政治学者として人気を得、政治家に転身してからも、歯切れのいい発言で支持を集めてきた。言葉の人でありながら、他者への厳しい批判が天に唾するようなものと、なぜ気づかなかったか。慢心。それに尽きるのではないか。