百聞は「一乗」にしかずである。JR富山駅と市北部の岩瀬地区を結ぶ7・6キロのほんのわずかな旅。次世代型路面電車(LRT)に揺られた

 13ある停留場・駅に張られたポスターが利用者を見送り、出迎える。例えば廻船問屋が軒を連ねた江戸情緒を残す街ではこんな言葉が添えられていた。<耳を澄ませば、いまも遠い潮騒に いにしえ人の息吹が聴こえる>。地域の由来、景観を紹介したものだが、愛着、誇りが込められている

 ここに住む、働く、通う人の足となって10年になる。昨年度の輸送人員は1日約5600人。LRTは自動車一辺倒から路面電車も使う暮らしに変えつつある

 車内から、街路灯にある「空中花壇」が見える。この時季ならペチュニアが主流となるらしい。赤、ピンクが鮮やかだ。沿線の指定生花店で500円以上の花束を買った人の運賃は無料という。昨年は1日約5人。花束は車内だけではなく、家庭も和ましただろう

 花にまつわる土産話をもう一つ。それは一人親家庭の子どもたちが親に感謝の気持ちを添えて、花束を贈る「がんばるママにありがとうと花束事業」。費用は富山市が負担する。贈る方も、贈られる方もうれしくなる

 路面電車の走る速度に合う暮らしには花がある。街も人の心も、満たすのは花、花である。「一乗」して少し見えた。