ひょうたんから駒が出た。そんな気分になった英国民もいるのではないか。本音では欧州連合(EU)への残留を望んでいるが、不満もあるのでなんとなく離脱に投票した。あるいは、世論調査で残留が濃厚なことに安心して、面白半分で離脱を選んだ

ところが、開票の結果を見てびっくり。経済は混乱するし将来は見通せない。いくら後悔しても、後の祭りだ

米国の大統領選にも相通じるものがないか。現状への不満もあって、予備選で実業家のトランプ氏に投票した結果、よもやの共和党大統領候補に確定した。民主党のクリントン前国務長官との戦いの行方は見えない

トランプ氏はEU離脱について「英国民は主権を取り戻した。素晴らしいことだ」と評価する。一方、クリントン氏は「英国民の選択を尊重する」と冷静な見方を示す

心配なのは、対日強硬派で環太平洋連携協定(TPP)にも反対しているトランプ氏だけでなく、クリントン氏まで「TPPのような合意は拒否できる」と再交渉を示唆したことだ。新しい大統領から日本がどんな要求を突き付けられるか、分からない

折しも参院選のさなか。憲法改正も大きな争点である。改憲派も護憲派も、「なんとなく」や「面白半分」は禁物だ。英国の国民投票も米大統領選も、「よもや」は起こり得ると教えてくれる。